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年間第18主日

聖書箇所:ルカ12:13~21

 

7月、私は5人の方のご葬儀を司式しました。お一人お一人の生き方が、私の心に刻まれています。今日の福音と重なるので、ご紹介させていただきます。


お一人目

80代で亡くなられた女性です。信仰熱心で一時は修道院にも入られていました。ピアノがお上手で、お歌も大好きでした。

娘さんと仲良く暮らしておられましたが、2月、予想していなかった病気を告げられます。動揺する娘さんに「神様にお任せしましょう。」と言われました。 娘さんを気遣う優しさと、病を引き受ける覚悟を示されました。 私は、病院にご聖体を届けました。拝領された後、

「デオ グラチィアス(神に感謝)」としっかりとしたお声で答えました。全てを引き受けて、神に感謝する美しい気高いお顔でした。

「ガリラヤの風かおる丘で」が大好きでした。意識が遠のく中、娘さんが「ガリラヤの風かおる丘で」を歌うと手を握り返してくれました。「夕暮れのエマオへの道で 弟子たちに告げられた いのちのみ言葉を 私にも聞かせてください」

4番を歌う頃、呼吸が止まりかけます。もう一度、「いのちのみ言葉を 私にも聞かせてください」

最後の歌詞を歌いました。歌い終わった時に、口が動きました。言葉は「ありがとう」 大きく息をして天に帰られました。神様からいただいた命を神様にお返しされました。


お二人目

この方も修道者、司祭を志しましたが、途中で道を変えます。お仕事で忙しく働く中で、教会のお手伝いをしてくだいました。芸術家で、マリア像をご自分で作って売れたら献金をされました。手先も器用で、お得意の板金の技術を活かして、教会バザーで美味しい焼きそばが焼ける鉄板も作って下さいました。

ご自宅に聖体をお持ちしました。話しかけてもお返事はありません。それでも「ご聖体ですよ」と話しかけるとさっと手を合わせました。体に染み込んだ信仰。信仰が人生を支え続けました。モーツァルトの「アヴェ ヴェルム コルプス」の歌詞そのものでした。

「信仰という遺産を残したい」ご家族にそうおっしゃっていました。まさに、「神の前で豊かな人生」を見せてくださいました。


3人目

この方はお仕事を通して天に宝を積まれました。

ご自宅にお邪魔した際に「どんなお仕事をされてましたか?」と、失礼にも過去形で訪ねてしまいました。 すると「弁護士です」と答えられました。 「今も弁護士のお仕事を続けています」と誇らしげでした。亡くなられる少し前まで、ベッドの上で、弁護士のお仕事のことを思い続けておられました。

その方は、中小企業の経営者の苦しみを一緒に背負ってこられました。親身で、愛情を持って関わることを生きがいとされました。病気も克服しながら、弁護士を60年間やり遂げました。

その方の自叙伝からご紹介します。

私が一番大切にしていることは、いつも健康であること。信頼を得ること。信頼を与えること。誠実であること。学識豊富であることなど、良い言葉を思いつくが、全部は到達していない気がします。

それで一番大事なのと言えば「信(頼)」という言葉に尽きると思います。

事件の依頼者、関与される裁判官、相手方の弁護士に対して「彼のいうことならばそうしよう」と務めてきた。また、信頼されるように腹を割って話してきた。

「信(頼)」は裏切りや背信、敵対の心がない平和を目指す言葉でもあります。

この「信(頼)」の言葉が欠ける人は、早々と弁護士の世界から遠ざかり、薄暮(はくぼ たそがれの人生)に入っていく。私は長い弁護士生活の中でその様な人生を歩んだ人をたくさん見てきた。一瞬にして弁護士の地位を失った人がいる。

人への信頼、人からの信頼が弁護士の基本、人として生きる基本、と書かれていました。

お仕事で助けられたたくさんの方がご葬儀に参列されていました。


信仰を通して、お仕事を通して、私たちは富を築いていきます。富を後に残していきます。私も皆さんも、神の国のため、人のために富を積んでいきましょう。信仰の遺産を残していきましょう。


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