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年間第14主日

  • shibatakiyoshisj
  • 4 日前
  • 読了時間: 4分

キリスト教は、派遣する宗教、ミッションの宗教と言われています。イエス様は弟子たちを、そして私たちをご自分の代わりとして世に派遣しています。

けれども、イエスさまから直接派遣された、とはなかなか思えません。今日は「派遣」にまつわる私の体験をお話しします。


聖イグナチオ教会の鐘楼

「派遣」という言葉は、辞書では「ある使命をもって赴かせること」とあります。もう少し意味の幅を広げると「送り出されること」も含まれるでしょう。私たちはいろんなところで「送り出されて」います。朝、学校に、子どもたちは送り出されるし、学校を卒業すると子どもは家族から社会人として送り出されます。会社で研修を終わるとお客様のところに送り出されます。


大学を卒業した私は、会社に入って3ヶ月間研修を受け、正社員の辞令と名刺をもらいました。営業マンとしてのデビューです。私の就いた仕事は、住宅会社の営業でしたが、名刺があれば売れるというものではありません。

「一体自分に家など売れるのだろうか?」と半信半疑のまま3年近くが過ぎました。


3度目を迎えたお正月に、展示場で議員バッチを光らせた方と出会い、2ヶ月間ほぼ毎日通って、奇跡的に契約をいただきました。高額物件だったので、気をよくした私は自信をつけ、急に業績が上がりトップセールスマンの仲間入りをした気分でした。会社からもご褒美で、オーストラリア旅行に連れて行ってもらいました。


けれども、人生そう甘くはありません。そのお客様のお宅の工事は、色々な不具合があってクレームになってしまいました。「あれだけ頑張って契約してもらったのに」という残念な気持ちと、お客様への申し訳なさがこみあげました。

お詫びの気持ちをこめて、お客様の自宅と店舗の引っ越しの手伝いを、夜10時ごろから夜中2時3時まで、1週間続けました。そして、結局、「柴田、お前は悪くない。お前の会社を選んだ俺が悪い。」となんともやるせない言葉を最後にいただき、辛い1週間が過ぎました。


その後、クレームを出してしまったにもかかわらず、そのお客様は、麻雀仲間、外車好き仲間、親族、役所の知人他たくさんの方を私に紹介くださいました。自分としては、面倒見のいい、アフターケアのしっかりした営業マンのつもりでいました。


そのお客様と出会って10年経ち、イエズス会に入るために、会社を辞める報告をしに挨拶に伺いました。そして本当のことが分かりました。

「私がどうして柴田君のところに家をお願いしたのか話そう。」

とお客様は切り出されました。

てっきり、私が誠意をもって関わってきたからだと思いました。けれども、まったく違いました。


「私が柴田のところに頼んだのは、10数社検討した中で、お前が一番へぼい営業マンだったからだ。あの時、自分の息子がアメリカで勉強していて、もし実家を離れている柴田君を大事にすれば、息子もアメリカで誰かから大事にされるんじゃないかと思ったからだ」

と言われました。


わたしは、ショックを受けました。同時に、感謝の気持ちもこみ上げてきました。 そのお客様は、経験不足、知識不足の私を息子さんとダブらせて10年間お付き合いくださいました。なんてお礼の言葉を申し上げていいのかわかりませんでした。神様の計らいを感じました。


前置きが長くなりましたが、福音に戻りましょう。

私たちは、「何かいいことをしたい、人の役に立ちたい」と勇んで出かけます。でも、失敗して落ち込みます。あるいは反対に、経験や知識がないとしり込みしがちです。

けれども、派遣されるのはイエス様です。イエス様は、自分の行く先にご自身の代わりに私たちを派遣されます。だから、私たちは、経験や知識が不足していても飛び込んでいけばいいでしょう。イエス様は、必要な助けをあの時のお客様のように与えてくださいます。


だから、私たちは、人を励ましたり力づけたりできるはずです。 外へ出かけられなくても人のために心をこめて祈ることもできます。力不足や能力不足を感じていても、派遣されているイエス様に信頼して出掛けましょう。出かけることで、すでに福音を伝え始めています。


最後にお客様からから送り出される言葉をいただきました。

「柴田の信じた道をまっすぐ歩みなさい。柴田には向いていると思う。柴田は、ねちっこいからできるんじゃないか?」

私には、イエスからの派遣の言葉に感じました。

一人一人が「私は、あなたを世に遣わす」というイエスさまの言葉を心に刻み、歩んでいきましょう。


ルカによる福音書 10:1〜11


主聖堂 平和のあいさつをするイエス様のご像

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