四旬節第3主日、第4主日、第5主日で、洗礼志願者のために特に祈ります。信仰の道に入るには試練もあるので、共同体は「清めと照らし」の式によって志願者を支えます。志願者が、私たちが「闇」ではなく「光」を選べるよう願ってミサを始めましょう。
福音朗読:ヨハネによる福音 3・14-21
今朗読されたヨハネ福音書3章の冒頭にイエス様とニコデモの会話があります。
イエス様は「人は新たに生まれなければ、神の国を見ることができない」と言われます。
ニコデモはイエス様の話しに感銘を受けていました。素晴らしさを感じていましたが、世間体を大事にしました。イエス様の話に心を打たれたこと公になったら、信用を失うかもしれない。自分の立場を捨てられません。他人の目を気にしていたので、「夜」イエスのもとを訪れます。イエス様の話を聞いても「闇」の中にいます。社会的な地位を築いていたので、ゼロからやり直すことを恐れていました。「光」の方には進めませんでした。
私の体験です。会社を辞めて、イエズス会に入るか?迷っていた時に神学生からもらったアドヴァイスです。
「12年勤めたキャリヤを捨てて、司祭を志す。全く別の人生を始める。そんなことできるだろうか? 司祭になるのは10年かかる。無謀だから辞めておいた方がいいんじゃないか?」気持ちが揺れ動いていた時でした。
神学生は「光の方を選びなさい」と言われました。
「光」というのは苦労があっても乗り越えたら「大きな実り」があること。今は小さくても広がって大きな力になる。展望があること。「闇」は、無難な方、現状維持を選ぶこと。リスクはできるだけ避ける。安定するようでも、実りも小さく、展望もありません。
神学生のアドヴァイスで私は「光」の方を選びました。イエズス会に入って何年かは「闇」がやってきて不安がよぎりましたが、あのまま営業マンを続けていたら人生の展望は開けなかったように思います。「光」が私を導いてくれました。
「光の方に行く」というのは聖霊の働きと言い換えられるでしょう。
聖霊の働きを4つご紹介します。
(1) 方向づける力
1つ目は、方向づける力です。
ヨハネ福音書16章に「真理の霊は、あなたたちを導き、真理を悟らせる」(16:13, 14, 26参照)という言葉にあります。聖霊は、私たちを正しい方向へ導いて、救いや真理に到達させてくれます。磁石が北を指し示すように、聖霊は私たちを真理に方向づけます。
反対に「闇」の中にいる時は方向感覚を失っています。仕事中毒と言う言葉があります。かつての私もそうでしたが、この状態に陥ると、仕事を一生懸命していても、自分の人生がどこに向かって進んでいるのか分かっていません。ひた走っているのに、どこにたどり着くのか分からなくなっています。聖霊は、このような「闇」の状態、暗中模索の中で走り続ける状態から抜け出して、神様がいらっしゃる場所へと案内してくれます。
(2)自分をひとつにまとめる力
2つ目は、自分を一つにまとめる力です。
どこに向かって生きているのか分からないと、やっていることに一貫性がなくなっていきます。行動も支離滅裂になっていきます。今の苦しみから抜け出すためにいろいろなものに手を出すけれども、すぐに別のものに乗り換えてしまいます。手当たり次第に関心のあるものにエネルギーを注ぐけれども、まとまりや首尾一貫性がなくて結局なにも実りません。聖霊は、このようなバラバラの自分を1つにまとめていきます。あちらこちらに気が向いていた自分に統一感をもたらしてくれます。
(3)刷新する力
3つ目は、刷新する力です。
長く同じ環境にいて慣れてくるとマンネリに陥ります。停滞した雰囲気の中にいると、改善するよりも、このままでいい理由を挙げる方に頭が回ります。あるいは複雑に状況をとらえ過ぎてしまいます。聖霊は、一風のさわやかな風を送り込んで、新しいものの見方を提供してくれます。物事を複雑にするよりも、シンプルに見つめ直して問題点と改善方法を指し示してくれます。
(4)勇気づける力
4番目は、私たちが最も求めている慰める力、勇気づける力です。「慰め主 聖霊」(パラクレートス)です。
世の中、競争社会の影響でどんどん計算高くなくなっています。人のために何かをする余裕も失っていきます。振り絞って頑張っても「せっかくみんなのためにと思ってしたのに、無駄なことをしたのか?」「自分のことをしておけばよかったのか?」と疑問を持つこともあります。そんな時に聖霊が私たちを慰めてくれます。世の中は、単純に信仰を生きることが難しくなっているので、聖霊が今まで以上に働いてもらうことを願いたいし、私たちもより聖霊の促しに敏感になる必要があるでしょう。
私たちの人生には「光」があり「闇」があります。「光」へと導いてくれる聖霊の働きを感じていきましょう。そして、洗礼志願者が、「光」を選びとって、人生の展望が開かれていくように祈りましょう。
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